ゆるかわイラストが選ばれる理由
2頭身のちびキャラは、なぜ心地よいのか

うちの子の絵を作るとき、写真そっくりに描いたものより、まるっとしたちびキャラのほうがしっくりくる。そう感じる方は少なくないようです。これは好みの話でもありますが、それだけではありません。この記事では、アニマル日和が描いている2頭身のゆるかわイラストについて、どういうルールでできていて、なぜ心地よく感じられるのかを、ひとつずつ説明していきます。
この記事の内容
「うまい絵」と「そばに置ける絵」は、別のものです
絵の良し悪しというと、つい「どれだけ実物に似ているか」で考えてしまいます。でも、家に飾る絵、スマホの画面に入れる絵、毎日目に入る絵に求められるものは、正確さとは少し違います。
毎日そばに置くものは、見るのに力が要らないほうがいい。ちらっと目に入って、少しだけ気持ちがゆるむ。それくらいの距離感が、ちょうどよかったりします。ゆるかわイラストが選ばれるのは、この距離感を作るのが得意だからだと思っています。
この記事では、その「ゆるさ」がどうやって作られているのかを、種明かしのようにお話しします。感覚の話に見えて、じつはひとつずつ理由のあるつくりです。
ゆるかわイラストの中身は、4つのルールでできている
アニマル日和のイラストは、次の4つのルールで描かれています。この4つが組み合わさって、あの雰囲気ができています。
1. 2頭身のちびキャラ
頭と体をほぼ同じ大きさにします。実物の犬や猫の比率とは違いますが、そのぶん丸っこく、ぬいぐるみのような親しみが出ます。
2. こげ茶の、やわらかい主線
輪郭の線に真っ黒を使わず、こげ茶を使います。線の太さも一定にせず、少し強弱をつけます。
3. フラットな塗りと、やわらかい影を1段だけ
毛の1本1本や、細かい光の当たり方は描きません。大きな面をひとつの色で塗り、影は1段だけ置きます。
4. ほっぺにコーラルの丸
顔の左右に、うすいコーラル(オレンジがかったピンク)の丸を入れます。これが最後のひと押しになります。
自分で描いてみたい方は、ペットの絵の描き方入門で同じルールを手順にほどいています。ここから先は、それぞれのルールに「なぜ」があることをご説明します。
なぜ2頭身は、かわいく見えるのか
頭が大きくて体が小さい、目が大きくて顔の下のほうにある、手足が短い。このかたちを、人はかわいいと感じやすいと言われています。人間の赤ちゃんや、動物の子どもがそういう比率をしているためです。
2頭身のちびキャラは、この比率を意図的に作っています。実物より頭を大きく、目を大きく、手足を短く。うちの子が子犬・子猫だった頃の記憶と、どこかで重なるのかもしれません。「なんだかうちの子の子ども時代に似ている」と言われることがあるのは、たぶんそのためです。
それから、頭が大きいということは、顔に使える面積が広いということでもあります。目・鼻・耳・模様といった「その子だと分かる情報」を、たくさん入れられる。かたちを単純にしているのに、その子らしさが消えないのは、この面積のおかげです。
線をこげ茶にすると、やわらかくなる理由
同じ絵を、真っ黒の線とこげ茶の線で描き比べると、印象がはっきり変わります。黒はきりっと引き締まり、強く、少し硬い。こげ茶はやわらかく、あたたかい。線のかたちは何ひとつ変えていないのに、です。
理由のひとつは、コントラスト(明るさの差)の強さだと考えられます。白い紙の上の真っ黒は、いちばん差の大きい組み合わせで、目に強く飛び込んできます。こげ茶にすると差がわずかにゆるみ、輪郭が主張しすぎなくなります。
もうひとつは、色そのものの連想です。こげ茶は、木や土や動物の毛にある色です。日常のなかで見慣れているぶん、目になじみやすい。強い黒の線が「図面」や「記号」に見えるのに対して、こげ茶の線は「手で描いたもの」に見える、という違いもあります。
この効果は、黒い毛の子を描くときに特にはっきりします。輪郭まで真っ黒にすると、顔全体が一つのかたまりになって、目も鼻も見えなくなります。輪郭をこげ茶にして、毛の中だけを濃くすると、黒い子のままで表情が残ります。
ほっぺの丸が生む、親しみ
顔の左右にうすい丸をひとつずつ置く。たったそれだけのことですが、絵の印象がはっきり変わります。線も、かたちも、目の位置も変えていないのに、絵の温度が上がります。
これは、頬の赤みが「照れている」「あたたかい」「元気がある」という感じを伝えるからだと思われます。人が人の顔を見るときに読み取っている情報を、絵の中に持ち込んでいるわけです。実際の犬や猫の頬は赤くなりませんが、絵の中では通じます。
大切なのは、うすく、輪郭をはっきりさせずに置くこと。濃く塗ったり、はっきりした縁で囲んだりすると、頬の赤みではなく「丸いシール」に見えてしまいます。ぼんやりしているからこそ、自然に見えます。
小さな要素ほど、効きます
ほっぺの丸も、線の色も、影を1段にすることも、どれも小さな判断です。でも毎日目に入る絵では、この小さな差が積み重なって「見ていて疲れない」につながります。
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小さく表示しても分かる、シルエットの強さ
ゆるかわイラストの実用面での強みは、ここにあります。小さくしても、何が描いてあるか分かる。
写実的な絵は、細かい情報がたくさん入っています。毛の流れ、光の反射、瞳の中の色。大きく表示すれば見ごたえがありますが、縮めるとその情報が全部つぶれて、灰色っぽいかたまりになってしまうことがあります。
フラットな絵は逆です。もともと大きな面と単純な輪郭でできているので、縮めても構造が残ります。耳のかたち、体のまるみ、模様の位置。小さくなっても「あ、うちの子だ」が保たれます。
だからアイコンやグッズに向いています
SNSのアイコンは、実際にはかなり小さく表示されます。丸く切り取られることも多い。この条件で映えるかどうかは、細かさではなくシルエットで決まります。サイズの目安はアイコンにするときの記事にまとめています。
キーホルダー、缶バッジ、スタンプ、マグカップ。グッズになるものは、たいてい手のひらに乗るサイズです。ここでも同じことが言えます。何が作れるかはグッズのアイデア集をどうぞ。
飾ったときと、見返したとき
部屋になじみやすい
写真やリアルな絵は、存在感があります。それは良さでもありますが、飾る場所を選ぶ、ということでもあります。壁に一枚あると、その一角が「その絵の場所」になります。
ゆるかわイラストは、色数が少なく、線もやわらかいので、まわりの家具や壁の色とけんかしにくい。玄関の靴箱の上、キッチンの隅、仕事机のはしっこ。そういう「ついでの場所」に置いても、浮きません。飾り方の例は飾り方のアイデアにあります。
見返したときの、気持ちの軽さ
これは言葉にしにくいのですが、大事なところだと思っています。写真は、その日その瞬間をそのまま持ってきます。だから見返したとき、記憶も一緒に強く戻ってきます。うれしいときもあれば、少ししんどいときもあります。
イラストは、いったん「絵」というかたちを通しているぶん、受け止めるときの負荷が少しやわらぎます。とくに、旅立ったあとの子の絵を飾りたい方から、「写真だと涙が出てしまうけれど、イラストなら毎日見られる」というお話をうかがうことがあります。この話はメモリアルイラストの記事でくわしく書いています。
写実的な絵とのちがい — どちらが上という話ではありません
ここまでゆるかわイラストの話をしてきましたが、写実的な絵が劣っているという話ではまったくありません。できることが違うだけです。
写実的な絵は、その子そのものを写し取ることができます。毛のつや、瞳の色の深さ、年齢による毛の変化。細部までていねいに描かれた絵には、写真とはまた違う迫力があります。大きく飾って、じっくり見る絵として、これ以上のものはありません。
ゆるかわイラストは、その反対に、削ることで残すやり方です。情報を減らして、いちばん「その子らしい」ところだけを残す。全部を写し取ることはできませんが、小さくしても、遠くから見ても、たくさん並べても崩れません。
写真とイラストそのものの比べ方は写真とイラストのちがいにまとめています。あわせて読んでいただくと、選びやすくなると思います。
こういう絵が向く場面/写実が向く場面
- ゆるかわが向く
SNSのアイコン、スマホの壁紙、スタンプ、グッズ、玄関やキッチンに気軽に飾る、家族や友人に贈る、多頭飼いで何匹も並べる。 - 写実が向く
リビングの壁に大きく飾る一枚、額装して長く残す作品、毛の質感や瞳の色まで細かく再現したいとき。 - どちらでもよい
うちの子の記念に何か作りたい、というとき。好みで選んでよい場面です。まず作ってみて、しっくりくるほうを選ぶのが確実です。
多頭飼いのおうちでは、ゆるかわのほうが扱いやすいことが多いようです。何匹も並べたときにサイズ感や雰囲気がそろい、家族の絵としてまとまるからです。
かたちを単純にしても、その子らしさは消えません
「まるっとしたキャラにしたら、うちの子に見えなくなるのでは」というご心配は、よくいただきます。ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところかもしれません。
その子らしさは、細かさの中にあるのではなく、いくつかの特徴の組み合わせの中にあります。耳のかたちと角度。目のあいだの広さ。鼻の色。模様の位置。しっぽの巻き方。体つきのふっくら具合。この6つくらいがそろっていれば、かたちを単純にしても「うちの子だ」と分かります。
だからアニマル日和では、写真を見るときに、まずこの特徴を探します。細かい毛の1本1本ではなく、片方だけ折れている耳や、鼻先の小さな模様のほうを見ています。削るところと残すところを決める作業、と言ってもいいかもしれません。
さいごに
2頭身のかたち、こげ茶の線、フラットな塗り、ほっぺの丸。ひとつひとつは小さな決めごとですが、全部が「毎日そばに置いても疲れない絵」に向かっています。うちの子の絵は、飾ったその日だけでなく、何年も目に入るものだからです。
言葉で説明するより、実際に見ていただくのがいちばん早いと思います。アニマル日和では、はじめての方に1枚を無料でお渡ししています。うちの子がこのタッチになったらどう見えるか、まずは確かめてみてください。
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